実はこうした懸念こそ、早めのEV導入検討で解消できる課題そのものです。本記事ではその理由と、ファーストステップで何をすれば良いのかをご紹介します。
ESGとは環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の頭文字で、企業の持続可能な成長のための重要な指針です。投資家や取引先は、企業の脱炭素・環境対応を重視する傾向が強まっており、それはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)対応や温室効果ガス排出量の開示義務化の動きにも現れています。
国内サステナビリティ・ESGサービス市場
セグメント別支出額予測
2023年〜2028年
2023年は実績値、2024年以降は予測
EV導入は脱炭素への積極的な取り組みとして、ステークホルダーから高評価を得られる要素になります。採用活動やIR資料においても、EV導入事例はESG経営への意識が高い企業として注目され、企業のブランド価値向上に寄与します。また、社用車のEV化はESG経営の象徴として、企業のPRにも効果的です。
日本のガソリン価格は国際原油価格の変動や為替レートの影響を受け、大きく変動し続けています。2022年1⽉から同年6⽉にかけて、約170円から215.8円へと約30%上昇(下図)しました。直近では、2025年4月のレギュラーガソリン価格は全国平均で1リットルあたり約185円となり、政府の補助金制度により価格の安定が図られています。
経済産業省は燃料油価格激変緩和対策として、ガソリン価格の高騰に対応するための補助金制度を導入しました。しかし、これらの補助金は一時的で、長期的な価格安定には限界があります。
ガソリン価格の変動リスクを回避するため、電気自動車(EV)への移行が求められています。EVには、電力価格の安定性や再生可能エネルギーの活用により、燃料コストの予測可能性が高く、企業のエネルギーコスト管理に有利という長所があります。
乗用車 | 2035年までに新車販売で電動車100%を実現 |
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商用車 (小型) |
新車販売で2030年までに電動車20~30% 2040年までに電動車・脱炭素燃料車100% |
商用車 (大型) |
2020年代に5,000台の先行導入を目指すとともに、2030年までに2040年の電動車の普及目標 |
さらに、公共用の急速充電器30,000基をふくむ充電インフラ150,000基を設置し、2030年までにガソリン車並みの利便性の実現を目標にしています。
各社とも2030年に向けた数値目標・国内外の投資・電池調達体制の強化が進行中で、トヨタ・ホンダ・日産はバッテリーサプライチェーン強化とともにBEV専用工場や新技術開発を本格化しており、軽・商用分野ではスズキ・ダイハツ・トヨタの連携でEV化が加速しています。
企業名 | 販売目標 | 電動化に向けた主な動き |
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トヨタ |
2026年:EV+PHEV 150万台 2030年:EV 350万台 2035年:レクサスEV 100% |
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ホンダ | 2030年:EV 200万台 2040年:EV+FCV 100% |
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日産 | 2026年:電動車44%以上 2030年:EV比率60%以上 |
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スズキ | 2030年:EV比率20% |
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マツダ | 2030年:EV比率25〜40% |
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スバル | 2030年:EV50%(60万台) |
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ダイハツ | 2030年:国内乗用車EV100% |
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EVの「基本」
V1G(充電)
電力網や充電スタンドからEVバッテリーが電気を「受け取る」一方通行の流れ
EVの新しい活用
V2B(Vehicle-to-Building)
EVに貯めた電気を必要に応じて「建物に戻して使う」ことができる双方向の流れ
EVはエネルギーを「使う・貯める」の両方が可能なため、車としての移動手段だけでなく蓄電池としても機能します。一般的なEVは40〜100kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載(例:日産リーフ=62kWh、テスラモデルY=82kWh)しており、これは家庭用蓄電池(5〜12kWh)の数倍に相当し、1台で1日分の家庭消費電力をカバーできる容量です。EVが建物へ電気を放電(給電)できるV2B技術を活用すれば、以下のような活用が可能になります。
昼間 | EVを充電して再エネ電力を貯める |
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夜間・災害時 | 建物に放電して照明・空調等に使用 BCP対策(非常用電源)としての価値も発揮 |
「電気で動かし、使わない時間は、電気を活かす」ことで、新しいエネルギー運用を可能にするのがEVです。
車両の購入費だけでなく、燃料代・保険・整備・税金などを含めた「所有にかかる総コスト」のことです。
初期費用は安い傾向にありますが、エンジンオイルや点火プラグ、タイミングベルトなど定期整備が多く、長期的な維持費が高くなります。燃料価格は変動しやすく、ランニングコストが不安定です。
初期費用はやや高めですが、燃料(電気)代が安く整備項目が少ないため、維持費が安く抑えられます。国や自治体の補助金・優遇制度により、初期コストも実質的に軽減可能です。
EVとICE車の比較項目 | ポイントまとめ |
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EVはICE車よりメンテナンスが不要 |
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EVの生涯維持費はICE車より安い |
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EVバッテリーは長寿命 |
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EV | ICE(ガソリン車) | |
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年間燃料費 | 約7〜10万円(電気代) | 約15〜20万円(ガソリン代) |
年間整備費 | 約3〜5万円 | 約8〜12万円 |
合計TCO(5年間) | ICE比で最大100万円の削減が可能(車種・走行距離による) |
電力料金が高い時間帯(昼間など)に、EVや蓄電池に貯めた電気を建物で使うことにより、電気の購入量を減らし、契約基本料金の削減も検討可能になります。
例:ピーク時電力を1日30kWh削減 × 25営業日 → 約2,250kWh/月
@35円/kWhと仮定すると、月間約79,000円の削減効果(企業規模や稼働台数により変動)
実施主体 | 実証場所・条件 | 削減額(年間) | 月額換算 | 補足・備考 |
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日産自動車 | 神奈川県厚木市 リーフ6台・V2B活用 | 約50万円 | 約4.2万円 | オフィス建物への給電によるピークカット |
日本郵便(JP) | 晴海郵便局 EV+蓄電池連携 | 約45万円 | 約3.7万円 | 再エネ併用で電力需給を平準化 |
自動車技術会(JSAE)試算 | ピークカット50kW 基本料金1,600円/kW | 約96万円 | 約8万円 | 理論モデルに基づく削減見積 |
NTT西日本 × NTTスマイルエナジー | オフィスビルピークカット28.2kW実現 | 大幅削減 | ― | EMS+EVの組み合わせで制御 |
日本卸電力取引所(JEPX)では、2021年以降価格の乱高下が常態化しています。再エネ導入が進む中で天候による発電量の変動も影響が大きく、特にピーク時間帯や需給ひっ迫時には高騰リスクが顕在化しています。
EVや蓄電池、太陽光を自社でコントロールすることで、発電から消費・蓄電にいたるまでのエネルギーフローを自社内で制御可能にし、EMS(エネルギー管理システム)による時間帯別制御を組み合わせることで、変動価格市場への依存度を下げ、持続可能で価格変動に強い経営体質の構築を目指します。
複数EVや蓄電池を束ねて仮想発電所として運用し、電力市場や環境価値の提供で報酬を得ることができます。将来的にカーボンクレジットや自治体連携による新たな収益機会も見込めます。
自社EV充電器を社外に開放する課金モデルを導入すれば、直接売上よりも集客や滞在時間増加による副次効果が大きく見込めます。
例:普通充電70~150円/h、急速充電250~600円/30分
EVやフリート車両を蓄電池として活用し、電力系統へ調整力・予備力を提供することで報酬を得られます。年間数万円/台、フリート全体で数十~数百万円の収益も可能で、デンマーク等では1台10万円超の事例もあります。ただし日本では収益性・制度面で課題もあり、今後の制度整備に期待します。
EV導入はCO2排出削減を数値で示せるため、脱炭素経営やESG投資への対応として有効です。これにより投資家や金融機関からの評価が高まり、資金調達や取引先選定で優位性を持つことができ、環境配慮や先進性をアピールできるため、企業ブランディングや社会的信頼の向上にもつながります。
EVは燃料費やメンテナンス費がガソリン車より大幅に低減でき、長期的なランニングコスト削減が期待できます。各種補助金や税制優遇制度の活用で初期投資負担も軽減でき、経費の安定化と予見性向上に寄与します。
EVは非常用電源として災害時の事業継続計画(BCP)対策に活用でき、災害対応力や地域貢献力が向上します。
早期導入により、充電インフラやテレマティクス等の先進技術の実装・運用ノウハウを蓄積可能です。将来の自動運転やV2X(双方向給電)など新たなモビリティサービス展開の基盤になり、大手自動車メーカーとの連携や地域事業者との協業による新たなビジネスチャンス創出も期待できます。
2030年以降の電動車義務化やCO2開示義務など、将来的な制度変化に先行して対応することで、制度対応コストや混乱を最小限に抑えることができます。先行導入事例では、顧客や地域社会からの評価が高まり、企業経営面でもプラスになったケースもあります。
太陽光・蓄電池・EV・建物・電力系統が連携し、電力を自社内で柔軟に使えるよう発電・貯蔵・利用・売買をシームレスに行うことで、無駄のない運用を可能にします。
EV導入やエネルギー管理の仕組み整備には、数百万円~数千万円規模の初期投資が必要です。また、機器管理やデータ収集、関係部門との調整など運用負担も増える場合があります。
パートナー企業との協力や、補助金・支援制度の活用により、これらの課題は十分に解消可能長期的な視点で見れば、コスト以上の価値と競争力向上につながります。
課題 | 主な解決策 |
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充電インフラ・電力管理 | EMS・スマート充電・充電予約システム導入、ピークカット制御 |
車両・充電器のメンテナンス管理 | フリート管理ソフト・予防保全・OEM、専門業者との連携 |
運用・データ管理の手間 | テレマティクス・自動化ソフト・AI分析・一元管理 |
電力コスト・市場変動リスク | EMSによる最適化・再エネ連携・VPP参加 |
社員教育・運用ルール | 教育プログラム・運用マニュアル・データフィードバック |
車両利用実態 | 台数、用途、1日の走行距離、稼働時間、充電可能時間帯などをデータ化する。 |
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試算 | 燃料費・整備費・運用コストの現状とEV化後を試算する。 |
インフラ状況の確認 | 拠点ごとの契約電力、駐車場、充電設備の有無と設置の可能性を考える。 |
社内外の意見の把握 | EV導入への不安や期待をアンケートなどで確認する。 |
試験導入 | 1台から数台のEV+充電器を限定拠点で導入してみる。 |
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運用管理の実証 | 稼働率、充電スケジュール、ピークカット効果などを確認する。 |
費用対効果の分析 | 燃料費・電力料金・整備費の比較、BCP面の活用性評価をする。 |
課題の抽出 | 社員の運用感覚、トラブル対応、社内ルール整備の検証を行う。 |
リスク最小化 | 自社における導入課題を事前に把握することができる。 |
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ノウハウ蓄積 | 充電管理、運行管理、教育体制の整備に活用できる。 |
社内合意形成 | 実データに基づく説得で経営層や現場の納得を得やすい。 |
まずはスモールスタートが「成功の土台」に
内容・対象 | EV・PHEV・FCVの新車導入を支援(法人・個人・自治体対象) |
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補助金額(目安) |
普通EV:最大90万円、軽EV:最大60万円 FCV:最大260万円(加算措置あり) 例:GX鋼材導入で+3〜5万円 |
留意点 | 登録・申請期限あり 予算枠に注意 |
内容・対象 | 充電器・V2H/V2B設備など設置時の支援 |
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補助金額(目安) |
普通充電器:本体50%+工事100% 急速充電器:本体50〜100% V2H:設備30万+工事15万円 |
留意点 | 工事対象範囲に注意 V2H/V2Bにも上限あり (最大45万円) |
内容・対象 | 都道府県・市区町村の独自補助制度(例:東京都、横浜市など) |
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補助金額(目安) | 国補助と併用で100万円超の支援も |
留意点 | 地域で要確認、早期申請が有利 |
自社が該当するか、最新情報などは要確認
パートナーおよび、電力・電気・デジタルの各専門分野のコンサルタントと連携した「デジタルコーディネーター」が、現状把握フェーズから導入の支援をおこないます。
ACCESS社・セカンドフェイズ社(パートナー)にて、一貫提供体制を構築します。
プロジェクトマネージメント | 目的、要件、予算、スケジュールの確認、とりまとめ |
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設計(Engineering) | 現調、または、新築なら建築図面内での電気図面確認 基本設計、詳細設計、設計レビューと承認 |
調達(Procurement) | ベンダー選定、資材・機器の購入 これらの検査、導入先への搬入 |
工事(Construction) | 現場準備 設備、機器の設置 → 試運転、品質管理 |
引き渡し | 検査、試運転 クライアントの引き渡し |
O&M | 運用・保守サポート |